車谷長吉『人生の救い』(朝日文庫)

純文学的大衆路線

貧乏は好きですが破滅を目指したことはありません。人生に一夜漬けの解決法などありません。私(車谷)は、作家になるために一日四時間以上眠ったことはありません。作家は、書くこと以外のすべてを捨てなければなりません。痛みを伴うことだから実質ができます。ありきたりの人生を送った人は、ありきたりの悩みを引き受けて下さい。一人洞窟にこもって生きるのでなければ(そういう人を見たことがある、その人の表情は何と晴れやかだったことか)、人間関係で悩むのは当然のことです。ただ、その洞窟に住む人に食料を届ける人がいたように、厳しい選択には、必ずそれを救うものが現れるものなのです。結論めかせば、自分の不平等(不幸か)に気付いたときから、自分の本当の人生が始まります。それは、自分の境遇にふんぞり返って生きているひとよりよっぽどましなのです。・・・車谷長吉は、激しく反平凡を説きそのような自分の生を描こうとするが、何か通俗的なのが気に食わない。徹底的だが、典型的に過ぎる。