2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

西村賢太 『藤澤淸造追影』(講談社文庫、2019)

つげ義春が、「私小説しか読む気がしない」と言っていたのを思い出す。私も、私小説が好きだ。私小説には、貧困、性欲、病苦、無学歴、独りよがりと劣等感がいっぱいつまっている。西村賢太の場合はそこに暴力が蠢く。それも正義の暴力でなく些か卑劣な暴力…

高野慎三『つげ義春を旅する』(ちくま文庫、原著1998年刊)

この本は、つげ義春の漫画の舞台を探し訪ねる本ではない。結果としてそうなってしまう場合もあるが(下町にメッキ工場を探訪する件など)、そうではなく、われわれにとってとても懐かしい風景を、つげ作品をヒントにして探し・訪ねる本なのだ(この本では、つげ…

『橋川文三著作集3/明治人とその時代』(筑摩書房1985年刊)

ようやく読み終える。かなりいい。やはり乃木希典を扱った文章が圧巻で、涙がでてきた。維新革命の後の内乱の時代を乃木はどう生きたのか。橋川は、ついこのあいだまで先輩や友人、革命の同志ですらあった者らと闘わなければならなかった乃木の苦渋に着目す…