2020-01-01から1年間の記事一覧

カルロ・ギンズブルグ『ベナンダンティ』(竹山博英訳、せりか書房)

16~17世紀にわたって、北イタリア、フリウリ地方で“ベナンダンティ”と称する人々が、収穫の豊穣のために、魔女や魔法使いと、夜の戦いを行うのだった。歴史家は、異端審問所の調書を読み解き、“ベナンダンティ”の活動のいくつかの側面を明らかにしてゆく。 …

W. G. ゼーバルト『アウステリッツ』(鈴木仁子訳、2020年白水社刊)を読む

小説の書出しがいい。……六十年代、ベルギーや英国によく旅をした。半ば仕事、半ば目的の判然としない小旅行だった。アントワープの動物園を訪ねた。いろいろな動物の異様な姿に惹きつけられた。駅舎の待合室(“失われた歩みの間”と大仰な名で呼ばれる、本当だ…

『海事の第二次世界大戦海戦史』を読む4、EVAN MAUDSLEY: THE WAR FOR THE SEAS

4.日本帝国海軍の終焉近代戦において国を勝利に導く要因は何か。国の経済力か、国民・兵士の士気か、有能な軍事指導者か、はたまた運命のいたずらのような偶然、ないしは運・不運なのか。この本が重視するのは戦争の局面を有利に導く軍事戦術・武器類の革…

エヴァン・モウズリー『海事の第二次世界大戦史』を読む 3

真珠湾攻撃から山本五十六の死まで エヴァン・モウズリー『第二次世界大戦海戦史』を読み続ける。真珠湾攻撃からガダルカナル戦まで。日本の目もあてられない悲惨な戦いを読むことは耐え難いかとも思っていたが案外読める。連合国側も決して気安い戦いではな…

エヴァン・モウズリー『海事の第二次世界大戦史』、Evan Mawdsley, The War for the Seas: Maritime History of World War Ⅱ, Yale University Press in 2019

2.ナチスのノルウェーへの侵攻(1940年)とダンケルク撤収戦 いままでノルウェーのことを何も知らないできたが、この本を読むと、トロンヘイム、ベルゲン、ナルビクといった地名とともに、フィヨルド海岸の北の国の風景が目に浮かんでくる。何かの映画で見た…

エヴァン・モウズリー『海事の第二次世界大戦史』、Evan Mawdsley, The War for the Seas: Maritime History of World War Ⅱ, Yale University Press in 2019

1.読み始め 二葉亭四迷の言葉「文学は男子一生の事業にあらず」を思いだす。そのとき文学者は、男子一生の仕事をどう考えていたのだろう。「戦争と革命」というようなことを私は想像するのだが…。 この本、『海事の第二次世界大戦史』は、左派的な論調で知…

『木坂涼詩集』(現代詩文庫150、1997年思潮社)

現代詩を読んで久しぶりに感動した。つまらない人生だが(少なくとも私の生は…)、それを大事に扱うのが詩だ。「シーツを/ぴんとはろうとして/手をのばしていって/しわをだしてしまうように/田んぼの水を/風が/押してゆく」あるいは「ゴミの袋を/さげた人が黙…

ドストエフスキー『罪と罰』(亀山郁夫訳、光文社文庫、原作初出1866年)

ドストエフスキー『罪と罰』を、また読み始める。今度は、最後まで読み通そう。 『罪と罰』を読み続ける。つまらなくないが、私はかなりの程度、小説好きではなく、エッセイの方を好むのかも知れない、と思い始めている。 『罪と罰』、面白い。次々に出来事…

エリザベス・ストラウト『オリーブ・キタリッジの生活』(小川高義、早川書房、原著2008年刊)

これはなかなか素敵な小説なのだ。主人公のキタリッジという名前もいい。(実は、この小説を読んでみようと思ったのは、このキタリッジという名前(どこに根を持つ名前だろう)に惹かれたからかも知れない。アメリカ東部、ニューイングランドの海岸町クロズビー…

岩鼻通明『出羽三山』(岩波新書、2017)を読む!

多くの日本人の根にある山岳信仰のひとつの姿を辿る!かくも豊かな信仰の姿、陰影ある文化が、近代化の圧力のもとで命脈を絶たれかけていた。この本は、どうにか生き永らえた出羽三山の山岳信仰について、その活動(修験道)、古い記録(芭蕉や出羽三山詣でをし…