2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

レオ・アフリカヌスあるいは『トリックスター・トラベル』5

Natalie Zemon Davis, Trickster Travels: A Sixteenth-Century Muslim Between Worlds (2006)についてのノート 5.近世初頭の北アフリカにおける宗教の閾を超える性的逸脱についてイスラム教の発生の地、西アラビアの言葉は、非アラブ圏の言葉と接触し変質…

レオ・アフリカヌスあるいは『トリックスター・トラベル』4

Natalie Zemon Davis, Trickster Travels: A Sixteenth-Century Muslim Between Worlds (2006)についてのノート アル・ワッザーンは、アフリカについての草稿をチュニス沖での拿捕の際にも、肌身はなさず持っていた。アル・ワッザーンのイタリア在留時代は、気…

ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論第3巻』(今村仁司・三島憲一ほか訳、岩波現代文庫2003年刊)

ベンヤミンの本は、翻訳のあるものはひとおり全部読んだ。それで何が一番好きかというと、迷わずに『パサージュ論』だ。以前は、図書館で借りて読んだが、今回は第三巻を購入し、再読した。やはり素晴らしかった。読んでいて、何とも居心地がいい。無論、理…

クリフォード・トンプソン、“本を読め、あるホームレスの思い出”(タイムズ文芸付録、2018年1月12日号)

デリックという黒人のホームレスは、一風変わったところがあった。「本を読め」と通行人に呼びかけるのだった。もう何年もキーフード食料雑貨店のところに屯していて、時々言葉を交わした。無論、彼を友人だと思ったことはない。ニュージャージーの大学で法…

レオ・アフリカヌスあるいは『トリックスター・トラヴェル』3.

Natalie Zemon Davis, Trickster Travels: A Sixteenth-Century Muslim Between Worlds (2006)についてのノート 1524年には、また異人が現れキリスト教徒とユダヤ人による反トルコ連合を提唱し、ローマの人々を騒がせた。ティルベ川の河口で、チュニジアの海…

ジェニー・フィルドマン、“グリーン・ライン、エルサレムから”(タイムズ文芸付録、2018年1月5日号)

読み切れないでたまっていたタイムズ文芸付録を拾い読みしていたらパレスチナの今を伝える文章に目が止まった形容詞を排した簡潔な文章そして世に喧伝されているクリシェとは異なるパレスチナの今の現実に触れられた思いがする風景や事物や歴史が そして引用…

前田耕作『バクトリア王国の興亡』(筑摩学芸文庫、原著1992年刊)

「歴史は夢想させる」というヴァレリーの言葉で始まる。扉のページには、バクトリアの工房で制作された青年像の写真があり、なぜ、その像が未完に終わっているのか、疑問をなげかけている。多くのオリエンタリストを虜にした中央アジアのギリシャ植民国家の…