E. コセリウ『言語変化という問題』(田中克彦訳、岩波文庫)

早朝、TSL(タイムズ文芸付録)を読んでいると、今、米国起源の語彙・文法を使わないで、もはや英国人は文章を書けないのだ、と言う。なぜだか、とても心にとまった。…言葉は国力や権力と無関係ではないのは無論、正文法も浸食される。 

「言語変化という問題」こそが言語の生命なのだ、という至極当然なことを言っている。ソシュールは、共時態という考えの導入で、言語活動の時間性を切断し固定化した。それによって言語活動を実証科学的な分析の対象にし得たが、言語活動の主体たる人間を排除してしまった。言語変化とは言葉の乱れである。言語はその使用によって乱れを引き受けるのだ。…蘊蓄ある本だ。手許において熟読したい本である。だが、テーマは単純ではっきりしていても、それを論証していく手さばき・論理は厳密で、本気でとりくまないと理解はむずかしいだろう。