1987年、南イングランドの大暴風雨

北京は、冬の寒さは厳しいが天災地変がないので長らく都であったのだ、と聞いた。2011年の東日本大震災のときは、英国には、天災という天災がなく、穏やかなところだと聞かされ、彼此の違いに不思議な感覚を覚えた。
だが、英国には猛烈な嵐(テンペスト)があった。1987年の大嵐(the great storm of
1987)についての本(Tamsin Treverton Jones, Windblown)の書評が面白かった(タイムズ文芸付録)。大嵐に対する英国の人々の反応、そしてこの本の取材の切り口がとても独特である。大嵐は、収穫まえの作物を根こそぎした。死者18人、倒木の数千五百万本(くるみ、唐松、しで、など)。だが、それらの倒木を切断し、トラックで運び、嵐のレリーフ彫刻を作った人たちがいた(中国風の獅子が暴風雨に立ち向かう、その不思議なモチーフも面白い)。また、倒木の下敷きになって一人のホームレスが死んだ。著者は、そのホーモレスの生涯を追う。もと、国防軍の兵士だった。…統計数字では表れない、嵐に遭遇した人々の現実の表情が浮かんでくるようだ。