『木坂涼詩集』(現代詩文庫150、1997年思潮社)

現代詩を読んで久しぶりに感動した。つまらない人生だが(少なくとも私の生は…)、それを大事に扱うのが詩だ。「シーツを/ぴんとはろうとして/手をのばしていって/しわをだしてしまうように/田んぼの水を/風が/押してゆく」あるいは「ゴミの袋を/さげた人が黙って並ぶ/袋の中では/おしゃべりが/賑やかだ/袋の口をぎゅっと握る」。さりげない日常の断片を描く言葉というより、詩人の心のさざ波が聞こえてくるようだ。それはとても透明で深い。お勉強してその成果を人に自慢するようなところが全然ないのがとてもいい。