アシュヴァ・ゴーシャ『ブッダチャリタ』(梶山雄一、小林信彦、立川武蔵、御牧克己訳注、講談社学術文庫)

カニシカ王(2世紀)の時代に、バラモン教から仏教徒に改宗した学僧が、サンスクリット語で、ブッダの誕生から、遺骨の分配までを綴った。北伝系統の讃仏文学の傑作と言われる。後半部は、サンスクリット原文が失われているためチベット語訳からの翻訳と言う。『ブッダチャリタ』の日本語訳が大事業だったことを偲ばせる。ブッダの生涯の物語は平易で、また通俗に過ぎず、原始仏典の香りがするのがいい。教えの部分は、中村元訳のサンスクリット仏典を彷彿させる。なぜ、王子は満ち足りた生活に満足できず、修行の道・森にむかったのか、というようなことを考えながら、ブッダの生涯と考えを辿ることができる。この本を買って読めば、私にはどうもよく分からない仏教の考え方が、私の方に近づいてくる気がする。