角幡唯介『極夜行』(文芸春秋社2018)

ずーと夜、ずーと昼という世界があるのだ。探検においてスポーツに還元されない要素は、何なのか。…橇を引く犬達を食料計画にもり込むことは、スポーツ的ではない。小屋にデポした、ドッグフードを盗まれるのも、スポーツ的ではない。極地を旅するために犬橇の操作をおぼえるのも、スポーツ的ではない。90日も極夜でサバイバルするのもスポーツ的ではない。食料獲得のために銃をうつこともスポーツ的ではない。要するに、文明というシステムの外へ向かうことが冒険なのだろう。だが、現代において文明のあらゆる要素を完全に排除した冒険がありえないように、冒険の要素をもったスポーツの可能性もあるのだ。…文芸春秋の編集方針にそうような分かりやすいが迎合的な文章が鼻につく。より精神性の高い表現を求めるのは、私のアナクロニズムなのか。