W. G. ゼーバルト『目眩まし』(鈴木仁子訳、白水社)

どうもこの作家は、ある作家の文章に追記したり再構成したりして小説にしてしまうようである。とても惹かれる。一番目は、ナポレオン・ボナパルトのアルプス越えを同行取材したスタンダールの旅の再構成だ。二番目は、フランツ・カフカのヴィーンへの出張とイタリア(トリエステ)への休暇の旅を再構成している。…一行一行の文章がとてもいい。だから、この本はどこからでも読める。人が生きていくうえでのもろもろの齟齬を、違和を、孤独を、静かに、文章にしている。(人生に意味はなく、ただ、知性の活動だけがかすかに生の一面を、瞬時、充実に結びつける。)